「寝る間も惜しんで努力」は成功への切符なのか?
SNSを開けば、今日もタイムラインには意識の高い言葉が踊っています。
「成功したければ、人が寝ている間に努力しろ」 「睡眠時間を削ってでもやる価値がある」 「ショートスリーパーになれば、人生の時間は2倍になる」
キラキラしたアイコンのインフルエンサーや、若くして成功を収めた起業家たちが、口を揃えて「睡眠を削る努力」を称賛しています。彼らの言葉には力があり、聞いているだけで「自分もやらなければ!」「今のままでは置いていかれる!」という焦燥感に駆られます。
私も、そんな言葉に踊らされた一人でした。
39歳、未経験で飛び込んだ営業の世界。毎日14時間会社に拘束され、ノルマに追われ、上司に詰められる日々。手取りは22万。将来への不安は、常に足元にまとわりつく影のように私から離れませんでした。
「このままでは一生、社畜として使い潰されて終わる」
そんな恐怖から、私は副業としてブログを始めました。ブログで稼いで、経済的な自由を手に入れ、会社に依存しない生き方を実現する。それが私の目標であり、希望の光でした。
しかし、現実は甘くありません。14時間働いた後にブログを書く時間を確保するのは、至難の業です。帰宅は深夜、体はクタクタ。そこからPCを開いて記事を書く気力なんて、残っているはずがありません。
そこで私が手を出したのが、冒頭のような「睡眠時間を削る努力」という甘い囁きでした。
「みんなやってるし、自分もやればできるはず」 「1週間くらいなら無理しても大丈夫だろう」 「成功のためには、これくらいの犠牲は必要だ」
そう自分に言い聞かせ、私は「1週間限定の4時間睡眠生活」に挑戦することにしました。
それが、地獄の始まりとも知らずに。
この記事は、39歳の平凡な会社員が、睡眠時間を削るという「間違った努力」をした結果、心身にどのような異変が起き、仕事やブログにどのような悪影響が出たのかを、赤裸々に綴った記録です。
そして、その失敗から学んだ、「凡人なおじさんが長期戦で戦うための、最低限の睡眠ルール」を提示します。
もし今、あなたが「もっと頑張らなきゃ」「睡眠時間を削ってでもやるべきか」と悩んでいるなら、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
第1章:地獄の1週間、開幕
Day 1:根拠のない自信と、少しの高揚感
挑戦初日。私は目覚まし時計を午前4時にセットしました。普段は午前6時起きなので、2時間の早起きです。就寝時間は午前0時。これで睡眠時間はきっかり4時間です。
アラームが鳴り響き、私は跳ね起きました。意外にも目覚めは悪くありません。「よし、今日から新しい人生が始まるんだ」という高揚感が、眠気を吹き飛ばしてくれたのかもしれません。
静まり返った早朝のリビングで、熱いコーヒーを淹れ、PCを開きます。キーボードを叩く音だけが響く、この特別な時間。私は自分が「選ばれた人間」になったような、奇妙な全能感に包まれていました。
「これならいける。2時間もあれば、記事の1つや2つ、余裕で書ける!」
初日は、根拠のない自信に満ち溢れたまま、意気揚々と出社しました。
Day 2:忍び寄る影
2日目。アラームの音で目が覚めましたが、昨日ほどのスッキリ感はありません。頭が少し重く、まぶたが鉛のように感じます。
「まあ、昨日張り切りすぎたかな」
そう軽く考え、再びコーヒーを流し込み、PCに向かいます。しかし、昨日ほど集中力が続きません。文章が頭に入ってこないし、言葉がスムーズに出てきません。
それでも、「ここでやめたら負けだ」と自分を鼓舞し、なんとか記事を書き進めました。
出社後も、午前中はなんとか乗り切りましたが、午後になると強烈な睡魔が襲ってきました。会議中、上司の話が子守唄のように聞こえ、何度か意識が飛びそうになりました。
「やばい、これはまずい」
焦りを感じながらも、「まだ2日目だし、体が慣れていないだけだろう」と自分に言い聞かせ、その日は早めに就寝しました。
第2章:体に起きた異変(具体的な症状)
Day 3:体の悲鳴
3日目の朝、私は絶望的な気分で目を覚ましました。アラームが鳴っても、体が全く動きません。まるで金縛りにあったかのように、ベッドから起き上がることができませんでした。
「嘘だろ…まだ3日目だぞ…」
這うようにしてリビングに行き、PCを開きますが、画面の光が目に刺さるように痛い。頭痛がひどく、吐き気すらします。ブログどころではありません。
「今日は無理だ…」
私は諦めて、二度寝をしました。結果、遅刻ギリギリで出社することになりました。
会社に着いてからも、体調は最悪でした。常に頭がボーッとして、思考がまとまりません。簡単な計算ミスを連発し、同僚に指摘されて初めて気づく始末。
さらに、体のあちこちに異変が現れ始めました。
- 目の下のクマ: 鏡を見ると、目の下に今まで見たこともないほど濃いクマができていました。まるでパンダです。
- 肌荒れ: 頬や顎に、赤い吹き出物がいくつもできていました。39歳のおじさんなのに、思春期のような肌荒れです。
- 口内炎: 舌の裏側に、痛い口内炎が2つもできました。食事をするのも一苦労です。
- 肩こり・腰痛の悪化: 慢性的な肩こりと腰痛が、さらに酷くなりました。常に誰かが肩に乗っているような重さを感じ、座っているだけでも辛い状態でした。
体は正直です。睡眠不足というストレスに耐え切れず、悲鳴を上げていたのです。
Day 4:心の崩壊
4日目。体調不良はさらに悪化しました。しかし、それ以上に深刻だったのが、精神面の不調です。
朝起きると、理由もなく涙が出てきました。悲しいわけでもないのに、ただただ辛くて、情けなくて、涙が止まらないのです。
「なんでこんなことしてるんだろう…」 「こんなに頑張ってるのに、なんで何も変わらないんだろう…」
ネガティブな感情が次々と湧き上がり、自分を責め続けました。
会社でも、些細なことでイライラしたり、落ち込んだりするようになりました。
- 上司の一言に過剰反応: いつもなら聞き流せるような上司の小言に、過剰に反応してしまい、言い返してしまいました。その場の空気は凍りつき、後で激しく後悔しました。
- 同僚の雑談が耳障り: 隣の席の同僚が楽しそうに雑談しているのが、無性に腹立たしく感じました。「こっちはこんなに辛いのに、お前らは気楽でいいよな」と、心の中で毒づいてしまいました。
- 将来への絶望感: 「このまま一生、この生活が続くのか…」と、将来への絶望感が押し寄せてきました。ブログで成功する未来なんて、全く想像できなくなってしまいました。
睡眠不足は、体の健康だけでなく、心の健康も蝕んでいくことを、私は身をもって体験しました。
第3章:仕事で犯した致命的なミス
Day 5:崩壊の序曲
5日目。私はもはや、まともに仕事をできる状態ではありませんでした。体は鉛のように重く、頭は常に霧がかかったようにボーッとしています。
そんな状態で、私は重要な商談に臨むことになりました。相手は、私が担当する中で最も大きな取引先の一つです。
普段なら、商談前には入念な準備をし、想定問答集なども作成するのですが、この日は何もできていませんでした。
「まあ、なんとかなるだろう…」
そんな甘い考えで、私は客先に向かいました。
商談が始まると、私は相手の話が全く頭に入ってきませんでした。質問されても、的外れな回答をしてしまったり、言葉に詰まったりしてしまいました。
相手の担当者は、明らかに不快そうな顔をしていました。
「かとたかさん、今日はどうされたんですか? いつもと様子が違いますね」
そう言われた瞬間、私は頭が真っ白になりました。何を言えばいいのか、どう取り繕えばいいのか、全くわからなくなってしまったのです。
結局、商談は散々な結果に終わりました。具体的な話は何も進まず、相手からの信頼も大きく損ねてしまったと感じました。
会社に戻ると、私は上司に呼び出されました。
「お前、最近どうしたんだ? ミスは多いし、集中力もないし、今日の商談も酷かったらしいじゃないか」
私は何も言い返せませんでした。全て事実だからです。
「すみません…体調が優れなくて…」
そう言い訳するのが精一杯でした。
「体調管理も仕事のうちだ。プロなら、どんな状況でも結果を出せ」
上司の言葉が、胸に突き刺さりました。私は、社会人としての基本すらできていなかったのです。
Day 6:決定的なミス
6日目。私は、前日の失敗を引きずったまま、重い足取りで出社しました。
「もう、これ以上は無理だ…」
心身ともに限界を迎えていました。
そんな中、私はある重要な書類の作成を任されました。それは、会社の売上に関わる重要な契約書でした。
私は必死に集中しようとしましたが、頭が働きません。文字がぼやけて見え、数字が意味のない記号のように感じられました。
それでも、なんとか書類を完成させ、上司に提出しました。
しかし、数時間後、私は再び上司に呼び出されました。
「かとたか! これはどういうことだ!」
上司は、私が提出した契約書をデスクに叩きつけました。
「金額が間違ってるじゃないか! 一桁多いぞ!」
私は血の気が引きました。もし、このまま相手に提出していたら、会社に莫大な損害を与えるところでした。
「すみません…本当に申し訳ありません…」
私は土下座して謝りました。しかし、上司の怒りは収まりません。
「お前、何を考えてるんだ! こんな初歩的なミスをするなんて、信じられない!」
私は、ただただ頭を下げることしかできませんでした。
この一件で、私は社内での信用を完全に失いました。同僚たちは、私を腫れ物に触るように扱うようになりました。
「もう、この会社にいられないかもしれない…」
私は、絶望の淵に立たされていました。
第4章:ブログへの悪影響と「4時間睡眠」の結末
Day 7:限界、そして撤退
7日目。私は完全に燃え尽きていました。体も心もボロボロで、もうこれ以上「4時間睡眠」を続けることは不可能でした。
私は、ブログの更新も完全にストップしていました。PCを開く気力すら湧かなかったのです。
「ブログで人生を変える」
そんな目標は、どこか遠い世界の話のように感じられました。
私は、自分の愚かさを呪いました。
「なんであんな馬鹿なことをしたんだろう…」 「睡眠時間を削れば、成功できると思ったのに…」
私は、SNSの甘い言葉に踊らされ、自分を見失っていたのです。
この1週間で私が得たものは、何一つありませんでした。
- ブログの記事数: 0記事(初日に少し書いただけで、あとは何も書けず)
- 仕事の成果: 大幅なマイナス(重要な商談の失敗、契約書のミス)
- 健康: 最悪(肌荒れ、口内炎、肩こり・腰痛の悪化、精神的不調)
- 信用: 失墜(社内での信用を失った)
「睡眠時間を削る努力」は、私にとって「百害あって一利なし」の愚行でした。
私は、自分の限界を認め、撤退を決意しました。
「もう二度と、睡眠時間を削るなんて馬鹿なことはしない」
そう心に誓い、私はその夜、久しぶりに泥のように眠りました。
第5章:凡人なおじさんが長期戦で戦うための「最低限の睡眠ルール」
この地獄のような1週間を経て、私は痛感しました。
「睡眠は、全ての活動の基盤である」
どんなに高尚な目標を掲げても、どんなに強い意志を持っていても、体が健康でなければ、何も成し遂げることはできません。特に、私のような39歳の凡人おじさんにとって、睡眠不足は命取りになります。
若いうちは、多少の無理も効くかもしれません。しかし、年齢を重ねるにつれて、体の回復力は衰えていきます。睡眠不足のダメージは、若い頃よりも深刻で、回復にも時間がかかります。
私は、この失敗から学び、自分なりの「睡眠ルール」を作りました。それは、特別なことではありません。ごく当たり前のことですが、それを徹底することが、長期戦で戦うための唯一の方法だと確信しています。
ルール1:最低でも7時間は寝る
「人によって最適な睡眠時間は違う」と言われますが、多くの専門家は、成人の場合、7〜8時間の睡眠を推奨しています。
私も、色々と試した結果、自分には7時間程度の睡眠が必要だと感じました。6時間を切ると、翌日のパフォーマンスに明らかに影響が出ます。
「ブログを書く時間がない」という焦りはありますが、睡眠時間を削って作った時間で書いた記事は、質も低く、結局は時間の無駄になります。
それよりも、しっかりと睡眠をとって、集中して短時間で書く方が、はるかに効率的です。
ルール2:睡眠の「質」を高める
睡眠時間だけでなく、睡眠の「質」も重要です。いくら長く寝ても、眠りが浅ければ、疲れは取れません。
私は、睡眠の質を高めるために、以下のことを実践しています。
- 就寝前のスマホ断ち: 寝る1時間前にはスマホやPCを見るのをやめ、ブルーライトを浴びないようにします。代わりに、読書をしたり、ストレッチをしたりして、リラックスした時間を過ごします。
- 入浴: シャワーで済ませるのではなく、湯船に浸かって体を温めます。体温が上がることで、副交感神経が優位になり、眠りにつきやすくなります。
- 寝室の環境: 寝室は、暗く、静かで、快適な温度に保ちます。枕やマットレスなどの寝具にもこだわり、自分に合ったものを選ぶようにしています。
ルール3:昼寝を活用する
どんなに気をつけていても、どうしても眠気が襲ってくることはあります。そんな時は、無理をせず、短時間の昼寝を活用します。
15〜20分程度の昼寝は、脳をリフレッシュさせ、午後のパフォーマンスを向上させる効果があります。
会社では、昼休みにデスクで突っ伏して寝たり、もし可能なら仮眠室などを利用したりします。休日なら、ソファで少し横になるだけでも違います。
ただし、30分以上の昼寝は、かえって眠気を深くしてしまうので注意が必要です。
ルール4:自分の体の声に耳を傾ける
これが最も重要です。
「今日はどうしても辛い」「体が重い」と感じたら、無理をせず、休む勇気を持つことです。
「ブログを更新しなきゃ」「目標を達成しなきゃ」という焦りから、体の不調を無視して頑張り続けてしまうことが、一番危険です。
体は、限界が来る前に、必ずサインを出してくれます。そのサインを見逃さず、早めに対処することが、長期的に健康を維持し、活動を続けるための鍵となります。
「急がば回れ」が最強の戦略
「成功したければ、人が寝ている間に努力しろ」
この言葉は、一見すると真理のように聞こえます。しかし、それは「睡眠を削ってもパフォーマンスを維持できる、一部の天才や超人」にしか当てはまらない言葉です。
私のような凡人が、彼らの真似をして睡眠時間を削れば、間違いなく心身を壊し、再起不能になるでしょう。
ブログで成功し、会社に依存しない人生を手に入れる。それは、短距離走ではなく、マラソンです。
途中で息切れして倒れてしまっては、意味がありません。
「急がば回れ」という言葉があります。
焦って睡眠時間を削るよりも、しっかりと睡眠をとって、心身を健康に保ちながら、コツコツと努力を積み重ねていく。
それが、凡人なおじさんが長期戦を勝ち抜くための、唯一にして最強の戦略だと、私は信じています。
もし今、あなたが「もっと頑張らなきゃ」「睡眠時間を削ってでもやるべきか」と悩んでいるなら、もう一度よく考えてみてください。
あなたの体は、あなたの夢を叶えるための大切な資本です。
どうか、その資本をすり減らすような「間違った努力」はしないでください。
しっかりと寝て、美味しいご飯を食べて、適度に運動して、健康な心と体で、一緒に夢に向かって歩んでいきましょう。
私も、これからは「睡眠ファースト」で頑張ります。
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